“人に喜んでもらえる農業”を意識することが
自分自身のやりがいや生きがいに
1982年生まれ、和歌山県和歌山市出身
まごころ農園 園主 堀良輔さん
和歌山市と桃山町で新規農業者として「まごころ農園」を設立された堀さん。福祉系の大学を卒業し、その後経験もノウハウもない農業の世界に入られた経緯や想い、生き方について取材しました!
今の仕事に携わるきっかけや仕事内容
-まず始めに、現在されている仕事について具体的に教えてください。
堀:専業農家で桃を中心に栽培しています。その合間に野菜やサトイモ、ジャガイモといった根菜などを育てています。桃は桃山町で、野菜は和歌山市で栽培していて、最近は八朔も育て始めました。26歳か27歳の頃に農業を始めて、今年で桃が5年目で野菜類が3年目になります。
当時は、まだ今ほど農業が取り上げられていたわけではないので、周りからは変な目で見られました(笑)
大学が福祉系なので、同級生が福祉系の職場の内定をもらってくる中、自分一人だけ花を栽培する和歌山市内の企業に就職をしました。
-花ですか?
堀:そうです。花卉の生産をしていました。
ただ、花ではなく食べ物を作りたいと考えるようになり、会社を退職。独立したいという想いは当初から持っていましたので、その後はとにかく経験を積むため農家を転々とアルバイトしました。その時に桃山で農地を貸していただけるという話をいいただき、独立することになりました。
-農業をしたいというのは、大学に入る前から考えていたのですか?
堀:大学の4年の時に決めました。
-きっかけか何かがあったのですか?
堀:大学在学中に福祉職場の実習に行ったのですが、その実習を通じて自分に福祉職は合わないと感じました。
もともと高校の時から人のために何かしたい、という想いを持ち続けていました。その想いからパッと閃いたのが“農業”でした。
-「人のために何かしたい」から農業という発想がおもしろいですね。
堀:普通じゃない発想だとよく言われます(笑)
-ご実家が農業をされていたとか、どこかで農業に携わった経験があったんですか?
堀:それが、全くないんです。
自分は定時制の高校に通っており、高校時代から多様な人や考えに触れたことが「人の役に立ちたい」という想いの土台になったように思います。ただ、その時点では、具体的な形があったわけではなく、高校の進路指導の先生に相談したところ、「福祉系はどうか?」と言ってくれたこともあり、福祉系の大学に進学しました。その時点では、農業というのは考えてはなかったですね。
-野菜を育てたいという想いはいつ頃からですか?
堀:花に携わり始めてすぐです。始めは「園芸療法」というのもあるので花でもいいかなと思ったのですが、直接自分で売って、相手の反応を見て「うまい!」と言ってもらいたいと思いました。
勤めていた会社を辞めた後、果樹と野菜をやっている農家へアルバイトに行ったんですが、そこで食べさせてもらった李が美味しくて感動しました。それがJASをとっている有機農家だったということも今に活きていると思います。
仕事のやりがいについて
-今の仕事のどんなところにやりがいを感じますか?
堀:うちはほとんどのものを直販しているのですが、そうすると買ってくれた人の顔が見えるし、感想も直接聞くことができます。「うまい!」と言ってもらえた時は、本当にやっていて良かったと思いますね。
今はインターネット販売だけですが、ゆくゆくは桃山町で店舗を構えて、さらに和歌山市内でテントを張っての販売、そして無謀だと言われているのですが南の方への移動販売をしていきたいと思っています。
-移動販売だと人と移動用のトラックがあればできそうです。それほど無謀だとは感じないですが。
堀:和歌山の南部は過疎化が進んで、高齢の方たちはなかなか買い物に行けない。その人たちの話し相手と美味しい野菜を届けるということをやっていきたいです。
ただ、移動販売となると野菜・果物だけじゃなくて日用品なども売っていく必要があるのでそのあたりも考えていきたいと思っています。
-そのあたりはすごく福祉的な視点ですね。
堀:つながっていると言えば、つながっている感があります。
もちろん利益を上げないといけませんが、人に喜んでもらいたいというのが一番大きな理由です。
周りには東京や大阪へ農産物を売りに行く人が多いのですが、自分は逆に田舎に行って何かできたらと思います。周りにはまだまだ甘いと言われますが。
-周りの年輩農家の方々からはどんなことを言われたりするんですか。
堀:「こうしたらいいんちゃう?」とアドバイスをくれる人など、アドバイスだけではなく、様々な人から日々励ましてもらっています。すごくありがたいと思います。
-野菜が育っていく楽しさというのもやはりありますか。
堀:そうですね。味も毎年全然違ってきますので面白いです。
農業はどこかできちんと学んだことはなく、見よう見まねでやってきた感があるのですが、やり出すとすごく奥が深いです。ただ、理系の発想が必要なことが多いのですが、自分は理系がまったくわからないので、肥料の量などはいつも妻に聞いています(笑)
-はじめはやはり苦労が多かったですか。
堀:失敗ももちろん沢山ありました。すべて手探りでした。
-くじけそうになったことはありましたか。
堀:それはなかったですね。
-何が堀さんを支えていたのでしょうか。
堀:負けず嫌いというか、周りからは根性が座っているとよく言われます。やると決めれば、よっぽどの事がなければやってやろうと思っていました。妻も理解してくれていました。
-今は奥さんと二人でされているのですか。
堀:二人三脚でやっているという感じですね。妻は現実的で自分は先々の事を考えるタイプなので、上手にストッパーになってくれています。それに女性の方が勘鋭いですし(笑)
-農業を始める前と後でギャップはありましたか。
堀:本通りにすればきちんと育つ、と思っていたら大間違いでしたね。毎日が勉強で、周りを観察しながらやっていても、やっぱり毎年違うものができます。作れば売れるというわけでもないんだなと思いました。どうせ自分でやるなら自分の名前を出して、自分の名前を見て買ってほしい。それでとにかくおいしいものを作ろうと思いました。
-農業というと決まった休日がないイメージですが、それについてはどう考えていますか。
堀:休みは極端ですね。桃の時期は、朝3時半に起きて収穫、箱詰め、出荷と続きます。長い時は16時間くらい働いていたりします。逆に冬は、朝霜が降りていれば作業ができなかったりするので9時半から16時半くらいだったりします。その間に様々なイベントや気になる農家を回ったりしています。
-オフの時はそれ以外に何をされていますか。
堀:登山や寺社仏閣巡りをします。あとは千葉ロッテが好きで、京セラドームに行ったりしますね。
去年も、桃の作業を無理やり早く終わらせて試合を見に行ったりしていました(笑)
その分作業を早めに始めたりはしていましたけど。
後は友達とカラオケや飲みなど…。実はデスメタルが好きで、今はEluveitieというスイスのデスメタルバンドにはまっています。農業の時もヘッドホンでそれを聞きながら作業したりします(笑)
-将来はこうなっていたいというイメージはありますか。
堀:3~5年後には、桃を中心といた果樹農家として、ネットと実店舗、そして可能なら移動販売もやっていたいですね。
-農業は一生の仕事として考えていますか。
堀:死んだら灰は畑に撒いてくれ、くらいの勢いですね(笑)
農業を始める前から、よほどのことがないと辞めない、ということとできれば選果場などには出荷しないということは決めていました。差別化というわけではないですが、やはり自分の名前で売りたいという気持ちがあります。単に農業をやりたい、というだけなら数を作ればいいわけですが、こだわりを持ってやっていきたいですね。
-そもそも、堀さんとしては今の仕事を「働く」というイメージでやっていますか?
堀:言葉は不適切かもしれませんが「趣味」という方が強いです。趣味と仕事が一緒になっているイメージですかね。農業自体が自分のやりたかったことでもあるし、何よりおもしろい。すべてのことにつながっていきますね。
-仕事を楽しむコツのようなものはありますか?
堀:自分のやりたいことを貫くことと、周りの人の理解力だと思います。自分の場合は、妻も妻の両親も応援してくれています。やはり周りがあっての自分ですし、それが力となってやってやろうと思える部分もあるように思います。
-最後に、堀さんにとって「働く」とは?
堀:うまく表現するのは難しいですが人間関係などを含めた「すべての経験」というイメージです。普通に働いていたらある程度のお金は確保できるのでしょうけど、自分たちの場合は自らお金を捻出しないといけないですね。
-本日は長時間ありがとうございました! また桃を食べに行かせてくださいね♪
Categories: 若者インタビュー
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