「自身の可能性を広めつつ、やるべきこととやらないことの精査をしていくことが必要。」
1984年生まれ、和歌山県御坊市出身
JICA関西和歌山デスク 国際協力推進員 野村実里さん
2010年1月より、青年海外協力隊(村落開発普及員)として中央アジアのキルギス共和国で活動し、キルギスのタスマ村で女性たちと石けん作りを行った。村人の生活向上、女性の地位向上を図るために、一村一品活動として、キルギスに伝わる伝説の石けん作りを復活させる。
現在はJICA(ジャイカ)関西和歌山デスク・国際協力推進員として働いている野村実里さんに現在の仕事&働き方を聞いてみました!
-まず初めに、現在どういった仕事をしているのか教えてください。
色々なことをしていますが、仕事の1つにJICAボランティア事業(※1)における広報や相談対応があります。
JICAが行っている青年海外協力隊への応募相談や、青年海外協力隊から帰国した人の進路相談などです。
海外から帰ってきた皆が和歌山に残ってほしいという想いがあり、帰国者が現地で積んだ経験を和歌山で活かせる場所がないか日頃から探しています。
また、JICAボランティア事業のPRのために、公共施設などでパネル展を開催しています。それを通じて、海外に少しでも興味を持っている人が発掘できればと考えています。
そして学校に対しては、開発教育支援事業を行っています。
これは国際理解教育と考えて構いません。
私や青年海外協力隊から帰ってきた人が和歌山県内の学校へ出向いて国際理解に関する話をしたり、JICAが年1回開催している教師海外研修(※2)への参加を通じて国際協力の現場を自分の目で見てもらったりします。
また現地から持ち帰った教材を用いて国際理解に関する授業をしてもらうなど、生徒の教育に役立ててもらっています。
-様々な業務の中でも、一番力を注ぎたいと考えていることは何ですか?
それは国際理解教育活動です。
もっと多くの人に開発途上国の現状を知ってもらい、日本に住む私たちが出来る国際協力の形を一緒に模索していきたいと思っています。
多文化共生の観点でも違いを認め合う感覚を養ってほしいと思って取り組んでいます。
それによって視野をどんどん広げ、いつか実際に世界を経験してほしいと思います。
しかし、海外へ行く事がゴールではなく、海外に行って様々なことを経験し、得たものをきちんと日本社会に還元してほしい。
世界を通じて日本の事、社会の事、自分の事を振り返って考え、そこに課題があればその解決に向けて動いていけるようになることが大事なのです。
-野村さんが海外青年協力隊のその後の進路として、今の和歌山デスクを選んだ理由は何ですか?
条件として「地元和歌山であること」「海外とつながる仕事であること」この2つを考えました。
和歌山にいながら、キルギスでの活動を還元できるような仕事は何か、ということを前任の和歌山デスク担当者に相談しました。
その時に和歌山デスクの前任者がちょうど退任をするという話を聞きこれしかないと感じて応募しました(笑)
落ちたらどうしよう、とは全く考えていませんでした。
キルギスから帰ってきてすぐに応募し、1か月後には今の和歌山デスクで働くこととなりました。
-野村さんは和歌山の様々な媒体でその活動が取り上げられていますが、仕事の手応えは感じていますか?
そんなに大きくはありませんが手ごたえは感じています。
実は和歌山県のJICAボランティア排出率は日本で最下位なのですが、民間企業と連携したボランティア制度が
始まり、わかやまJICAボランティア応援団という団体も立ち上がり、国際協力の新しい波が和歌山に来ている、と実感しています。
その波をどううまく乗りこなしていくかが腕の見せ所ですね(笑)
また、東日本大震災を機に、人と人の絆や人道的活動の重要性が再認識されています。
海外だけではなく、国内でも様々なボランティア活動に尽力し、そこにやりがいを見出している若者が増えているのも事実です。
そういった方々ともうまく協働させていただければと思っています。
-野村さんが仕事を通じて実現したいことは何ですか?
地域が抱える問題を解決していきたいと考えています。
-地域の課題解決に関心を持っているのはなぜですか?
キルギスの活動がまさにそれだったからです。
私が赴任していたキルギスのタスマ村の場合は「仕事がない」という事が課題でした。
仕事がなければ作ればいいと考え、キルギス人女性たちと石けん作りという産業を興しました。
タスマ村での生活を存分に楽しんでいた頃、「こんな村に住んでいたくない。」「首都に行きたい。」という若者がとても多い事を知りました。
なぜこんなにいい村を出ていきたいと思うのか。
一度出て行って広い世界を見る事は大事だけれど、その後は村のために帰ってきてほしい、と強く思ったことがきっかけです。
-青年海外協力隊としてキルギスへ行き、キルギスと和歌山の像を重ねたのですか?
そうです。
キルギスのタスマ村で起こっていることは和歌山県でも同じだと痛感しました。
キルギスでは、タスマ村の女性たちと石けんを作り、主要な都市で売っていました。
タスマ村と言えば石けんと言われるぐらいの持続性のある産業にしたかったし、石けん作りを通じて収入を得られる人も増やしたかったんです。
村にある資源を有効活用してここまでできるんだということを、他の村にも伝えたかったのです。
そして和歌山にいる今、それと同じようなことを和歌山でも実践できないかと模索中です。
これについては今の仕事を卒業した後の話になりますが、和歌山の山間部に暮らしながら、石けん作りを通じて、自然豊かな地方の魅力を発信し、他府県や海外からの誘客につなぐ事ができないかと考えています。
-今の仕事で大変なことはありますか?
地味な仕事が多いです(笑)
国際協力と言うと華々しいように見られがちだが、活動をするまでの調整が非常に大変です。
1人職場のため何でもこなす必要があり、地味な部分も多いんです。
しかし私はそれをマイナスには捉えていません。
準備をすればするだけ活動の質も良くなるし結果もついてくるからです。
-今の働き方は自分に合っていると思いますか?
時間に縛られずに動くことができるという点で、自分に合っていると思います。
家でも仕事をすることがあり、スキマ時間を利用して仕事ができます。
-仕事とプライベートの境界があいまいですね。
今はそれでも良いと考えていますが、それがずっと続いてはダメだと考えています。
今は、仕事が自分の人生のメインになっているため、プライベートが仕事になっても気にはなりませんが、仕事一辺倒という状態がこの先何年も続くと、極端に合理主義な人間になっていくのではないかと不安です。
そうなると、プライベートにおける友人との付き合いなどまで仕事に回すようになってしまいかねません。
そのような状態は自分で考えても怖くなります。
そうならないためにもプライベートと仕事を切り替える術を身に付けなければいけないと、ある人から教わりました。
-長期的に“働く”ということを考えると、そういった考えも必要になります。
自分の世界をどんどん広げられる人ほど、仕事を精査して気持ちにゆとりを持つということが難しくなると思います。
今は積極的に動いていかなければいけない時期ではありますが、自分の人生を創り上げていく中で、“何をしないか”ということを決めていくことも大事です。
色んな事に手を出し過ぎて自分を見失うのはもったいない。
可能性を広げることは大事ですが、同時に精査していくことも必要です。時間は限りあるものですから。
-自身のライフステージに合わせて、働き方を見直す必要があるということですね。
-野村さんの今後の抱負を聞かせてください
仕事であれ、プライベートであれ、腹を抱えて笑えるような幸せな人生を送ることです。
そのために、反省はしますがクヨクヨはしません。
うれしい事を素直に喜び、悲しみは涙とともに洗い流す。
自分のまわりにいる大事な人たちを、ちょっとでも笑顔にする事ができれば、自分が生きている価値があるなと思えます。
10年後にはお笑い芸人になってたりして(笑)
-最後に、野村さんにとって“働く”とは何ですか?
自分の人生をストーリー化するということだと思います。
周りに知ってもらっても恥ずかしくない生き方をし、それを後世に伝えていく、まさに自分という映画を作るようなものだと考えています。
-今後の活躍を期待しています。本日はありがとうございました!!
※1 JICAボランティア事業
日本政府のODA予算により、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する事業。開発途上国からの要請に基づき、それに見合った技術・知識・経験を持ち、「開発途上国の人々のために生かしたい」と望む方を募集し、選考、訓練を経て派遣する。具体的には青年海外協力隊、シニア海外ボランティア、などがある。
※2 教師海外研修
開発教育・国際理解教育に関心を持つ教員を対象に、実際に開発途上国を訪問することで、開発途上国が置かれている現状や国際協力の現場、開発途上国と日本 との関係に対する理解を深め、その成果を次代を担う児童・生徒の教育に役立てる機会を提供することを目的として実施される。
Categories: 若者インタビュー
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